日本臨床細胞学会雑誌
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胃潰瘍および胃癌の細胞核内DNA量の解析
榛澤 清昭石岡 国春及川 正道浅木 茂佐藤 明豊原 時秋梅津 佳英
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1986 年 25 巻 4 号 p. 621-630

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抄録

内視鏡直視下生検材料について, 胃粘膜の細胞核内DNA量を測定し, 次の結果を得た.1.正常粘膜に比べて潰瘍の再生性粘膜の平均核内DNA量は高く, なかでも修復期では活動期や瘢痕期に比較して高かった. 2.ポリペクトミー後の潰瘍は細胞分裂直後の細胞比率が高く, 盛んな修復活動が推定された.他方, 再発性潰瘍では不均一な細胞回転が想定された. 3. 胃癌病変ではDNA量, 分散傾向, 多倍体出現率などで良性病変に比較して有意に高かった. ヒストグラムをI-III型に分類すると, 深達度粘膜層の癌 (rn癌) と粘膜下組織層以下に浸潤した癌との間に差を認め, またリンパ管侵襲度とヒストグラムの各型とを比較すると一部を除き関連を認めた. 癌の組織学的分化度とヒストグラムパターンは一定の相関を認めなかった. 4. 異型上皮では, DNA量は正常粘膜との中間にあったが, 3c以上または4c以上の多倍体出現率のみで比較すると, 一部に癌病変と鑑別困難な例を認めた.しかしII型早期胃癌との鑑別や経過観察を含めた異型上皮の治療指針には有用と思われた.

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