1986 年 25 巻 4 号 p. 706-711
55歳男性にみられたhistiocytosis Xの鼠径部皮下腫瘤について, 捺印細胞像, 組織像, 電顕像および核DNA量の測定結果を報告した.腫瘤には, histiocytic cell, xanthoma cell, Touton型, あるいは異物型巨細胞などの浸潤増殖がみられた.histiocytic cellは深い切れ込みを有する核とやや少量の細胞質を有し, 捺印標本, 組織標本ともに免疫組織学的にS100蛋白陽性であった.電顕的には細胞内小器官は比較的良く発達しているが, lysosomeは乏しく, 一部の細胞にLangerhans cell granule (Birbeck顆粒) が認められた.また, histiocytic cellの核DNA量の測定からaneuploidyとG2, S期細胞の増加がみられ, 本例のhistiocytic cellが腫瘍性である可能性が示された.