日本臨床細胞学会雑誌
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女性性器におけるChlamydia trachomatis感染の細胞診とMicro TrakTM法による診断
椎名 義雄飯島 淳子依田 さつき沢田 好明武田 敏石川 明
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1986 年 25 巻 6 号 p. 1035-1042

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抄録

1,096名のMicro TrakTM法の成績は25例 (2.3%) が陽性で, 地域別にはS市8/360 (2.2%), Y市11/493 (2.2%), 0町6/243 (2.5%) と地域間での差はみられなかった. Micro TrakTM法陽性 25例の年齢分布は30歳までが1/18 (5.6%), 31~40歳10/331 (3.0%), 41~50歳11/429 (2.6%), 51~60歳3/248 (1.2%) であり, 若年者での陽性率が高かった.
ビランや帯下などの所見はMicroTrakTM法陽性者と陰性者で著明な差はみられなかった.
Papanicolaou標本でChlamydia trachomatis (C. trachomatis) 感染の診断可能な星雲状封入体nebular inclusion=NIは8/25例 (32%) にみられた.
Micro TrakTM法陽性者の性周期は増殖期が8例 (32%), 排卵期が5例 (20%), 分泌期が6例 (24%) であった. 興味あることに分泌期の5/6例 (83.3%) のPapanicolaon標本にNIを認めた.
Papanicolaou標本における各種細胞の出現頻度は, 化生細胞76%, 修復細胞28%であった. 好中球は52%の症例で増加を示したが, かなりの増加 (卅) を示したのは12%であった. 幼若リンパ球は80%の症例に認め, 総好中球・リンパ球数に対する割合は7例が10‰ 以上であった. また, 組織球は18例 (72%) にみられた.
今回の検索では本邦においても欧米とほぼ同じC. trachomatisの潜在罹患者の存在が示唆された. また, Papanicolaou標本でC. trachomatis感染を診断するためには, NIの検出はもとより, 化生・修復細胞や幼若リンパ球の出現および一部の粘液に沿ってのみ球菌状のものが密在する所見は, 副所見として重要と思われた.

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