日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部原発腺様嚢胞癌の1例
上坊 敏子安西 弦蔵本 博行佐々木 憲一
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1986 年 25 巻 6 号 p. 1103-1108

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抄録

きわめてまれな腫瘍である子宮頸部原発のadenoid cystic carcinomaを経験したので, その細胞像とともに, 組織像・電顕像について報告する. 細胞診では, 大小不同性に乏しい小型の腫瘍細胞が, 重積性著明な集塊を形成して出現している. 核は類円形~楕円形で, 大小不同性は乏しい. 核クロマチンは増量しているが, その分布は均等である. 小型の核小体を認める細胞もある. 細胞質は乏しく, レース状で, ライト・グリーンに淡染する. 孤立性に, あるいは重積性ある細胞集塊中にglobules of mucusが散見される. このほかに, 大型で厚い細胞質を有する異型細胞を少数認めた. 組織学的には, 小型で比較的均一な腫瘍細胞よりなり, 少量の結合織で大小の胞巣に分けられている. 胞巣内には嚢胞状部分を認め, 全体として, いわゆる篩状構造を呈している. この嚢胞状部分は, PAS染色では陰性であり, Alcian Blue染色では陽性であったが, hyaluronidase消化によって陰性化した. 腫瘍細胞のごく一部には, 分化型扁平上皮癌と判定される像も認められる. 電顕像の特徴は, intercellular spaceと基底膜物質に囲まれたpseudocystの存在であった.

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