日本臨床細胞学会雑誌
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子宮内膜再生過程に及ぼす性ホルモンの効果
家坂 利清井上 浩木村 茂
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1987 年 26 巻 3 号 p. 449-456

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抄録

人工妊娠中絶術後に出現する子宮内膜再生細胞について, 性ホルモン投与後の形態変化を観察した (109例).全体を無処置群, プロゲステロン投与群, エストロゲン投与群の3群にわけ, 術後2~3日と6~8日に内膜細胞診を施行した.主として核分裂細胞と巨細胞の出現率という観点から, これらの検体を分析し, 以下の結論を得た.
1. プロゲステロンやエストロゲンは再生細胞の出現率には影響は及ぼさなかった.
2. だがプロゲステロンもエストロゲンも再生細胞の分裂能を低下させた.特にエストロゲンの作用は著明であった.
3. エストロゲンには再生細胞を小型化し, 成熟を抑制する作用もある.プロゲステロンにはこの効果は明らかでなかった.
これらの作用が生体内においていかなる役割を果たすか, 詳細な意義は不明である.しかし成熟内膜が両ホルモンにより発育を制御されるのと異なって, この場合両者の作用とも抑制的であることから, 細胞増殖を基盤とした内膜の再生は内分泌因子だけでは解釈しにくい.また同じ内膜とはいえ, 成熟腺細胞と未熟な再生細胞では, エストロゲンに対する応答が異なる事実も興味深い.

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