日本臨床細胞学会雑誌
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Polyoma virus感染が示唆された8例の尿細胞所見について
伊藤 園江大田 喜孝原武 晃子森塚 祐子丸山 正人入江 康司
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1987 年 26 巻 4 号 p. 566-571

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抄録

尿細胞所見および電顕所見からHuman polyoma virus感染が疑われた8症例を報告した.
Papanicolacu染色では, 小児の4症例で核内封入体細胞 (lntranuclear inclusion bearing cells, INIB細胞) が標本内細胞の90%以上を占めたのに対し成人の4症例では約30%程度であった. INIB細胞の細胞質はライトグリーンに淡染し, 核は11~18μで円形~類円形を呈し, N/C比の著明な増大を認めた.核内所見はINIB細胞のほとんどがスリガラス状を呈し, 鳥の目状, 核崩壊状を呈する細胞も少数ながら全症例に認めた.また, 8症例中4症例では核内がスリガラス状に変化した多核の表層移行上皮細胞を認め, ウイルス感染などに高率に出現するとされる細胞質内封入体細胞 (Intracytoplasmic inclusion bearing cells, ICIB細胞) を全症例に認めた.
INIB細胞の電顕所見では, 核内に30~40nmのエンベロープを欠くウイルス粒子が結晶状に配列しPolyoma virusの存在が考えられた.なお, 本細胞の由来はPapanicolaou染色による細胞形態および電顕的に原形質内にトノフィラメントが豊富に認められることから移行上皮であると推定された.

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