26 巻 (1987) 4 号 p. 585-592
胃疾患患者447例について, 胃生検組織診と直視下擦過細胞診を併用し, 次のような結果を得た.
1. 158例の癌における陽性率は, 生検組織診86.1%, 擦過細胞診84, 8%で, 両者を併用した場合は98.1%となり, 単独の検査結果よりも12%以上の成績向上が示された. なお, 偽陽性例はみられなかった.
2. 43例の癌では生検組織診または擦過細胞診での判定が疑陽性または陰性であったが, その原因を分析した結果, 生検組織診では陥凹性病変の微小癌 (5mm以下) と進行癌で表面に変性壊死のある例, および癌の表面露出の少ない症例が主体で, 的確に組織が採取されなかったことによった. 一方, 擦過細胞診では陥凹性病変が主であり, 採取細胞が少ないことおよび高ないし中分化型腺癌のため細胞異型の程度が弱いことが原因であった.
3.細胞診疑陽性は49例で, 癌13例, 良性疾患24例, Atypical epithelial hyperplasia (以下ATPとする) 11例, Reactive lymphoid hyperplasia (以下RLHとする) 1例であった.癌例の大部分は早期癌で, しかも高ないし中分化型のため細胞の異型性が乏しいことが誤疑診の原因となっていた.良性疾患では, 胃炎および胃潰瘍の再生性変化に伴う良性異型細胞がその原因と思われた.