日本臨床細胞学会雑誌
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異なる経過をとったDysgerminoma 2例の細胞診所見と組織所見の比較検討
勝部 泰裕頼島 信岩沖 靖久藤井 恒夫江川 健士上馬場 是美藤原 篤
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1987 年 26 巻 4 号 p. 628-633

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抄録

卵巣未分化胚細胞腫は, 日産婦分類では中間群に属しているが, その予後は個々の症例によりかなり異なっている. われわれは, 手術療法と維持化学療法により良好な経過を続けている症例 (良好例) と, 術後化学療法を行うも早期に再発し, 放射線療法が著効を呈したものの, 合併症 (劇症肝炎) のため急死した経過不良な症例 (不良例) についてその細胞所見と組織所見を対比して検討した結果を報告する.
細胞所見では両症例ともリンパ球を背景としてcyanophilicな細胞質をもつ大型の細胞が多数認められた. N/C比は増大し, 著明な核小体を有しているのが特徴的であった. Chromatinは両者ともおもに粗大顆粒状を呈していたが, 良好例の方に粗大化が顕著であった. しかし, 細胞や核の形態については大小不同と多形性や核の辺縁不整などの所見は不良例に著明であった.
組織所見からは, 良好例では索状-胞巣状の増殖を示すのに対し, 不良例においては主として禰漫性浸潤性増殖が認められ, 広汎な壊死を伴う部位も存在していた. リンパ球浸潤は良好例に多く認められたが, mitotic activityについては不良例に顕著であり, 不良例の方に異型性が強い所見が認められた.

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