尿膜管癌は, 膀胱腫瘍のなかでもまれであり, 尿膜管癌の細胞診についての報告は学会報告のみである. われわれは, 尿膜管癌の1例を細胞診を中心に考察し, 報告した. 症例は, 40歳, 男性で, 入院2年前より排尿終末時痛および白色調粘液の尿中混入をみることがたびたびであった. 膀胱鏡で膀胱頂部に一部潰瘍形成のある腫瘍を認め, 尿膜管腫瘍が疑われた. 自排尿では, 異型細胞, 腺細胞をみなかったが, 膀胱洗浄液中に腺癌細胞を認めた. 癌細胞の核は偏在性で, 核クロマチンの増量, 核の不整な重積がみられ, 胞体には粘液空胞を認めた. 膀胱洗浄液中に粘液を認めた. 生検では, 異型性の乏しい腺組織をみ, 尿膜管遣残が疑われたが, 手術時の迅速診断では粘液癌であった. 腫瘍捺印標本では, 多量の粘液とともに粘液産生像を示す腺癌細胞がみられた. 組織学的に, 膀胱表層に露出した部位は乳頭状腺癌で, 内部は粘液癌であった.