日本臨床細胞学会雑誌
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卵管原発clear cell adenocarcinomaの1例
木島 聡三浦 弘資岩成 治山本 和彦森山 政司飯田 幸司長岡 三郎小池 美貴男並河 徹北尾 学
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1987 年 26 巻 6 号 p. 1149-1153

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抄録

原発性卵管癌は婦人科悪性腫瘍ではまれな疾患であり, 病理組織学的には単純な腺癌で, 乳頭状, 胞巣状, 髄様の組織像を示すのがほとんどである.さらに卵管原発clear cell adenocarcinomaはきわめてまれであり, 本邦では報告がない.
61歳の主婦で, 不正性器出血を訴えて来院.膣頸管細胞診では深層型の扁平上皮細胞のなかに, 少数のシート状に配列した腺型悪性細胞を認めた.子宮内膜細胞診 (エンドサイト法) では出血性背景のなかに集団あるいは孤立散在性に多数の腺型悪性細胞を認め, 細胞はやや大型, 類円形ないしは高円柱状であり, 細胞質は明るく, 核は偏在していて, また核の大小不同は著明で, 核小体は多くは1個で明瞭であった.病理組織診は右卵管膨大部に乳頭状に増殖するclear cell anenocarcinomaを認めたが, 被膜破綻はなかった.両側卵巣および子宮内膜に悪性所見はなかった.
以上のように, 今回術前に細胞診と超音波断層法で原発性卵管癌を疑い, 術後に卵管原発clear cell adenocarcinomaと診断した症例を経験したので報告する.

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