日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺乳頭状腫瘍の細胞学的研究
藤井 雅彦石井 保吉張堂 康司佐久間 市朗長尾 緑萩原 勁早川 欽哉加藤 一夫
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1987 年 26 巻 6 号 p. 952-957

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抄録

嚢胞内乳頭癌8例と乳管内乳頭腫16例の捺印細胞標本を用い, 乳腺乳頭状腫瘍の細胞学的特徴について, 核DNA量, 核径および核小体の性状を中心に検討を行った.
核径分布については, 乳頭癌, 乳頭腫ともに8~12μmのものが大部分で, 平均値では乳頭癌が9.86μm, 乳頭腫が9.50μmとやや悪性例で高値を示したが, いずれも大小不同性に乏しく, 両者の間に顕著な差を認めることはできなかった. 15μm以上の核の出現頻度はどちらも低率ながら, いくらか乳頭癌の症例に日立っ傾向にあった.2.5μm以上ないし5個以上の核小体を有する細胞の出現率は, 乳頭癌全体ではそれぞれ1.86, 1.18%, 乳頭腫全体では0.41, 0.10%で, 非癌例に比べて癌例で高い値を示した. 核DNA量については, 乳頭癌では8例とも高2倍体にピークを有し, 8倍体あたりにまで広がる幅広い分布を示したのに対し, 乳頭腫では2倍体ないし高2倍体にピークをもち, ほぼ6倍体にまで広がる分布を呈した。核DNA量が4倍体を越える細胞の出現頻度は乳頭癌では平均1138%, 乳頭腫では平均3.34%と, 明らかに悪性例に高率であった.

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