日本臨床細胞学会雑誌
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アミラーゼとCA125を産生するエストロゲンレセプター陽性卵巣癌の1例
酵素抗体法二重染色による検討
松田 壮正小野 大志西谷 巌布川 茂樹松田 勲上中 雅文熊谷 千晶井上 幸夫
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1988 年 27 巻 1 号 p. 71-76

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抄録

唾液腺 (S) 型アミラーゼおよびCA125を産生する卵巣類内膜癌症例に遭遇し, さらに, アミラーゼおよびCA125局在と腫瘍細胞内エストロゲンレセプター (ER) の有無との関連性を酵素抗体二重染色法で検討した. 興味深いことには, 術前高値を示した血中アミラーゼとCA125は, 術後すみやかに正常値に復した. また螢光抗体法により, 腫瘍の捺印細胞中にアミラーゼの局在が確認され, 腫瘍ホモジネート中にはS型アミラーゼのみが検出されたことより, この腫瘍はアミラーゼを産生分泌していることが明らかになった. 腫瘍組織を抗ERモノクローナル抗体を用いて酵素抗体法 (PAP) で染色した結果, ERは核内に局在していた. この切片に対して, さらにPAP法によりアミラーゼまたはCA125染色をかさねる二重染色を施した. アミラーゼは, ER陽性細胞中に局在したが, CA125は組織構築に関連して観察された. ステロイドホルモンに対する応答は細胞分化を意味するものと思われ, アミラーゼは分化にも関連して出現すると考えられた. このように多彩な性格を示す腫瘍の異なったマーカーの検討には免疫細胞化学的重畳染色は有用であろうと考えた.

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