日本臨床細胞学会雑誌
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口腔剥離細胞診の基礎的研究
部位, 性, 年齢, 総義歯, 妊娠による口腔粘膜の変化
宮下 隆敬矢部 茂季大沢 英夫城下 尚
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1988 年 27 巻 4 号 p. 484-497

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抄録

本報の目的は, 部位, 性, 年齢, 妊娠, 特にいまだ不明瞭である義歯による口腔粘膜への影響を細胞診により明確に把握し, 従来の口腔粘膜細胞診に関する知見を補強することである. 健康な小児, 成人, 高齢者 (義歯非装着者および総義歯装着者) の男女135名を対象として, 口腔粘膜6カ所の剥離細胞診を, 一部症例には組織学的検索を行った. 得られた所見の主なるものは, 以下のとおりである.
1. 性, 年齢に関係なく硬口蓋粘膜および上・下顎歯肉で角化度が高く, 頬粘膜, 軟口蓋粘膜, 下口唇粘膜で角化度は低かった.
2. 性差は小児以外で認められ, 成人, 高齢者で女性は男性に比して歯肉で角化の減少傾向を示した.
3. 年齢差は男女ともに同傾向を示し, 小児から成人へと加齢すると歯肉で角化が高まり, 成人から高齢者へと加齢すると主に禽肉で角化の減少傾向が認められた.
4. 義歯装着により男女ともに硬口蓋粘膜で顕著な角化の減少がみられ, 歯肉でも軽度であるが同様の傾向を示した.
5. 妊婦は成人女性 (非妊婦) に比して主に歯肉で顕著な角化の減少を認めた.
6. 剥離細胞所見は組織所見をよく反映していた.

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