日本臨床細胞学会雑誌
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上部後縦隔より発生した脊索腫の1例
田中 健次小松 彦太郎石原 尚田島 紹吉
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1988 年 27 巻 4 号 p. 553-557

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抄録

手術材料スタンプ標本にて推定した胸椎脊索腫に細胞像, 免疫組織化学, 電顕像を加え報告した. 症例は33歳男性, 胸部X線異常陰影を主訴として来院, X線検査にて手拳大の腫瘤を認め縦隔腫瘍の疑いにて手術, 摘出腫瘍の細胞診標本を作製した. 異型細胞は粘液様物質を背景に平面的集塊をなして出現し, 腫瘍細胞は多辺形から紡錘形で細胞質はライトグリーンに淡染性で単房または多房性の空胞がみられた. 一部に印環様細胞も認められた. 核は中心性で2核のものが多く, 少数ながら異型の強い細胞多核細胞も認められた. 類円形核でクロマチンは顆粒状または網状で増量しており, 小型または大型の核小体を認めた. 病理組織像では脊索腫に特有な泡状細胞 (physaliphorouscell) を認め, 壊死物質も認められた. 免疫組織化学では, NSE, S-100蛋白に強陽性を示した. 電顕的には, 多数のmicrofilamentsが認められ, microvilli, desmosome, グリコーゲン顆粒がみられた. 泡状細胞の空胞の由来については,(1) RER,(2) 小空胞の集簇,(3) 細胞間貯留物質の陥入が考えられた.

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