日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
卵巣癌のsecond look operation時の腹腔内洗浄細胞診について
藤井 美穂工藤 隆一森若 治高階 俊光木村 滋子小田 由起子
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 27 巻 6 号 p. 855-859

詳細
抄録

卵巣癌症例37例中29例に対しsecond look operation (以下SLO) を施行し, SLO時の腹腔内洗浄細胞診の意義について検討した. SLO時残存腫瘍がみられたのは18例 (62.1%) で, 5年生存率は5.5%(1/18) であった. 肉眼的および組織学的に癌組織を認めなかった11例 (37.9%) の腹腔内洗浄細胞診成績は, 陰性例9例, 陽性例2例であった. 陰性例9例の5年生存率は77.7%(7/9) であり, 陽性例は2例とも5年以内に死亡した. 抗癌剤有効例では抗癌剤投与前は腹水細胞診において多数の細胞集団が観察されたが, シスプラチン腹腔内投与後は細胞集団が著明に減少するとともに細胞集塊は小型化し, 集積性はやや弱まり平面的になった, さらに癌細胞は変性所見を示唆させる形態学的変化を示し, SLO時残存腫瘍はなく, 腹腔内洗浄細胞診でも陰性であり予後は良好であった. 癌細胞の早期の減少は抗癌剤の反応および予後を判断する上での重要な指標と考えられるとともに, SLO時の腹腔内洗浄細胞診は残存腫瘍のない場合, その症例の予後をみる上で非常に有用であると推測された.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top