日本臨床細胞学会雑誌
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CA125およびTPA産生性卵巣漿液性嚢胞腺癌培養株の樹立とその性状
清塚 康彦今井 俊介野田 恒夫森本 純司森山 郁子一條 元彦螺良 義彦
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1988 年 27 巻 6 号 p. 926-935

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抄録

2種類の腫瘍マーカーCA125およびTPA産生能を有する, ヒト卵巣漿液性嚢胞腺癌由来の培養細胞株 (SHIN-3) を新たに樹立し, その性状を解析した. 細胞は多稜形ないし短紡錐形を呈し敷石状配列を示しながら発育し, 容易にpileupする. 増殖曲線から計測された倍加時閲は, 第12代において48.3時間, 第20代で26.7時間であった. 第12代の細胞密度は9.3×104/cm2, 分裂指数は3.2%であった. 第14代の染色体分析では, 染色体数は58本から64本に分布し, そのモードは61本にあるpseudotriploidyを示した (61xx). その他, 8種類のtrisomyが確認された.1×105個の細胞を7目問培養したところ, 培養上清中にCA125が1,500U, TPAが37.5U産生された. 樹立細胞はnudemouse移植可能であり, 移植腫瘍は組織学的には分化度の低下がみられたものの, ほぼ原腫瘍に類似した腺癌像を呈した. S田N-3株は安定したマーカー産生能を有し, in vitroにおける細胞増殖とマーカー産生量についての検討では, CA125は全体的には総細胞数に依存して増加するが, 単個細胞あたり単位時間に産生されるCA125は細胞の対数曲線的増殖開始直前にpeakを有する.

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