腟および子宮頸部に原発した悪性黒色腫の2例を臨床細胞学的に検討した. 症例1は73歳主婦で腟壁に腫瘤があり, 同部の擦過細胞診で腫瘍細胞の胞体内に少数ながらメラニン顆粒と核内空胞を認め, 本症と診断し, 生検標本でこれと確認した, 症例2は80歳主婦で性器出血を主訴として受診. 当初臨床的にも細胞診および生検標本にても子宮頸部扁平上皮癌と診断され, 放射線の治療を受けていたが, その後腫瘍の擦過標本よりメラニン顆粒, 好酸性核小体および核内空胞が認められ, 子宮頸部原発の悪性黒色腫であることが判明した. 症例2の初回標本の腫瘍細胞の大部分はamelanoticであったが, その後のS-100蛋白の免疫染色により本症であることがさらに裏づけられた. 悪性黒色腫の診断におけるS-100蛋白などの免疫細胞化学の有用性についても考察した.