1988 年 27 巻 6 号 p. 984-987
症例は65歳男性で宮崎県出身. 成人T細胞白血病 (ATL) の比較的早期に. 血痰および肺に異常陰影を認め, 喀痰, 気管支擦過および気管支洗浄液中に多数のATL細胞と思われる腫瘍細胞を認め, 感染を含む肺の合併症との鑑別に有用であった1例を報告する.
喀痰, 気管支擦過および気管支洗浄液中に出現した腫瘍細胞は, Papanicolaou (Pap.) 染色では, 小型で細胞質は狭くライトグリーンに淡染し, 核形は不整で深いくびれや切れ込み, あるいは分葉状を呈していた. 核クロマチンは粗顆粒状で不規則に分布し, 核小体は不明瞭なものが多かった. リンパ節穿刺吸引中にみられた腫瘍細胞と比較すると大小不同性に乏しく, 比較的小型で核形不整の強い細胞が認められた.
また末梢血中の腫瘍細胞とリンパ節構成細胞のモノクローナル抗体に対する反応は, 両者ともhelper/inducerのphenotypeを示し, 同一系のものと考えられた.
剖検において, 肺を含むほとんどすべての臓器にATLと思われる腫瘍細胞の浸潤が認められた.