1989 年 28 巻 1 号 p. 11-18
スキルス胃癌細胞に及ぼす問質線維芽細胞の影響を明らかにするために, ヒト胃印環細胞癌由来細胞 (KATO-III細胞) とヒト胎児肺由来線維芽細胞 (WI-38細胞) を混合培養し, KATO-III細胞の変化を形態学的に検討した. 線維芽細胞と混合培養したKATO-III細胞では, 単独培養時に比べ細胞径が増加し, 糖蛋白, 酸性ムコ多糖類を含む空胞をもつ細胞が著しく増加した. このようなKATO-III細胞の形態学的変化は, 線維芽細胞のconditioned mediumでKATO-III細胞を培養した時にも認められた。また, 混合培養で生じたKATO-III細胞の形態学的変化は単独培養を行うと著減し, KATO-III細胞に認められた形態学的変化は可逆的であることが明らかとなった. 以上の結果は, 線維芽細胞の分泌する液性因子が, スキルス胃癌細胞に可逆的影響を及ぼす可能性を示唆している.