日本臨床細胞学会雑誌
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嚢胞形成を示した膵Glucagonomaの穿刺細胞診
症例報告
今井 律子夏目 園子新福 正人平野 みえ佐竹 立成
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1989 年 28 巻 1 号 p. 75-79

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抄録

患者は76歳の女性. 心窩部痛を主訴に来院し入院した. 精査の結果, 胆石と膵体部の嚢胞性病変が指摘された. 術中, 膵嚢胞の穿刺吸引細胞診が行われた.
細胞診標本中には平面的に弱く結合する腫瘍細胞が認められた. 腫瘍細胞および核は, ほぼ均一大で円形, 核縁は平滑で繊細なクロマチンが認められた. 細胞質は比較的淡明で, 辺縁は不明瞭であった.
摘出された膵腫瘍は大きさ2.5×2.5cm, 円形で大部分を占める嚢胞が形成されており, 血性の液体を容れていた. 嚢胞壁内には黄色調で軟かい腫瘍組織が認められた. 大部分の腫瘍細胞は酵素抗体法で, グルカゴン陽性であった. 術前の血糖値がやや高値を示す以外に異常を認めなかったので, 非機能性のgulucagonomaと診断された.
ほとんどの膵嚢胞性腫瘍は膵管に由来し, 粘液性および漿液性嚢胞腺腫あるいは嚢胞腺癌の像を示す. 膵島腫の細胞と前者の粘液性腫瘍とは細胞質内の粘液の有無で, 後者の漿液性腫瘍とは91ycogenの有無で鑑別できるが, 両者の細胞は強く結合して剥離することが多いのでこれも鑑別点になろう. しかし膵島腫もまれに嚢胞化するということを知っておくことがまず必要であると考えられた.

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