日本臨床細胞学会雑誌
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生検材料塗抹細胞のDNA histogram patternからみた胃癌悪性度推定の試み
工藤 浩史飯塚 保夫古賀 成昌
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1989 年 28 巻 3 号 p. 394-402

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抄録

胃癌治癒切除例125例について, 術前の生検材料塗抹細胞診標本を用い, 顕微分光測光法により, 核内DNA量を測定した.各症例のhistogram patternをdiploidy type (I型), aneuploidy type (II型) およびI型あるいはII型の優位なものをそれぞれIII型, IV型に分類した.さらに, 5c以上の細胞が全体の25%以上を占めるものをpoly ploidy typeとして, それぞれの亜型 (I', II', III', IV') とした.これら8型と進行程度すなわち深達度やリンパ節転移度, 組織学的分化度および予後からみた悪性度との関係について検討した.その結果, 進行程度が進むと, poly ploidy typeのものが多くなり, 再発例や癌死例ではaneuploidy typeのものが多かった.組織学的分化度別では, 低分化型で進行程度が進むと, aneuploidyやpoly ploidy typeが増加するが, 全体としてはdiploidy typeの占める割合が多かった.分化型ではstage Iや早期癌でdiploidyの占める割合が多いものの低分化型に比し, その比率は少なかった.% over 5cの割合をみると進行程度の進行とともに高くなる傾向にあった.以上より, DNA histogram patternを検討することは癌の悪性度を推測する指標となりうる.

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