28 巻 (1989) 3 号 p. 444-449
上皮型の腹膜悪性中皮腫と考えられる1例を経験したので, その細胞病理学的所見を中心に免疫組織学的および電顕所見を加え, また, あわせて細胞動態についても検討したので報告した.症例は50歳, 男性.腹水を主訴として入院.腹水細胞診と右頸部, 左鼠径部に腫瘤を認め両部より穿刺吸引細胞診と生検施行.CTで後腹膜, 腸間膜の肥厚を認めた.腹水細胞診や穿刺吸引細胞診では多数の中皮様細胞がみられ, 多核の大型細胞を混じ乳頭状集塊を形成し核内封入体も散見された.一部の細胞の表面には長い微絨毛がみられた.免疫組織学的にはEMA, Vimentin, Keratinが陽性, CEAは陰性.電顕的には分岐を示す多数の細長い微絨毛 (MLDR=17~19) が特徴的であった.本例のBrdUによるS期細胞の標識率は7%で, 他の症例の腹水から得られた反応性中皮細胞やマクロファージに比べて高かった.細胞診で上皮型悪性中皮腫細胞を同定することは困難なときがあるが, 種々の粘液染色をはじめ免疫組織学的, 電顕検索を行い中皮腫細胞としての特徴を見出すことが大切である.また, 本例で認められた核内封入体の所見や, BrdUを用いる細胞動態の検索は, 反応性中皮細胞との鑑別に有用と思われる.