日本臨床細胞学会雑誌
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アスペルギルスの判定に細胞診が有用であった1例
木村 雅友佐藤 隆夫門田 永治丹司 紅蛭間 真悟前田 光代橋本 重夫高橋 学酒谷 邦康
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1989 年 28 巻 4 号 p. 547-551

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抄録

脾カンジダ症を伴った気管支肺アスペルギルス症の1剖検例を報告し, それを用いて, 内臓真菌症の中でも原因菌属としてカンジダに次いで最も多いアスペルギルスの同定を, 菌糸のみの形態的特徴から試みた.
症例は43歳, 女性. 急性前骨髄球性白血病の再燃例で右肺中・下葉および左上葉にアスペルギルスによる肺炎をきたし, 右中・下葉の一部は横隔膜に癒着し, 右出血性胸膜炎を呈していた.左上葉では空洞を形成していた. 脾には結節状のカンジダ感染が認められた. 剖検時に右肺・横隔膜癒着部および左上葉空洞内の壊死物の塗抹標本を作製したところ, アスペルギルスの菌糸の特徴すなわち, Y字状に2分岐しながら一方向へ向かって増殖するようすがきわめて明瞭に見い出され, 組織標本で観察できた菌糸形態よりも真菌の同定に役立つと考えられた.

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