1989 年 28 巻 6 号 p. 769-774
近年, 細胞増殖の原動力ともいうべきDNA合成の態度を3H-thymidineと同じレベルで認識できる抗Bromodeoxyuridineモノクローナル抗体 (BrdU. Mab) が開発され腫瘍の成長解析に有力な手掛かりを与えるものとして注目されている.
われわれは, このモノクローナル抗体を用いて婦人性器腫瘍細胞の増殖動態の解析を試みた.
子宮頸癌19例にたいする酵素抗体法によるBrdU labelling index (B. L. I) は0.7-21.7%平均11.6%であり, Flow cytometry法によるBrdU陽性S-phase cellの割合 (S) は, 0.5-14.1%平均5.1%であった.
子宮内膜癌11例におけるB. L. I. は2.6-18%, 平均11%であり, Sは0.9-23.2%, 平均8.1%であった.
卵巣癌17例におけるB. L. I.は3.2-28.3%, 平均13.7%であり, Sは0.4-17.5%平均5.5%であった.
それぞれの婦人科悪性腫瘍においては臨床進行期および組織型とB. L. I.あるいはS期細胞との間に明らかな相関は認められなかったが, 悪性度が高いといわれている子宮内膜漿液性腺癌や卵巣の胎児腺癌では高いB. L. I.およびS期細胞を認めた.