日本臨床細胞学会雑誌
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肺末梢型腺癌の臨床的悪性度と擦過細胞像
太田 伸一郎斎藤 泰紀Noriyoshi NAGAMOTOMasami SATOU佐川 元保菅間 敬治高橋 里美薄田 勝男藤村 重文今井 督須田 秀一仲田 祐
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1989 年 28 巻 6 号 p. 818-823

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抄録

臨床的悪性度別に擦過細胞形態の定量的解析を行い, 擦過細胞診上の予後推定因子を検討した、臨床的悪性度は, I期腺癌の予後と腫瘍陰影の増大速度で評価した.
I期腺癌の絶対的治癒切除例中, 術後5年未満に癌死した10例を予後不良群, 術後5年以上の生存が確認された24例を予後良好群とした. 次に, 肺癌集検の胸部間接写真で発見し切除した末棺型腺癌のうち, 過去の間接写真にも腫瘍陰影が存在した20例を陰影増大速度小の群, 以前に腫瘍陰影は存在しなかった8例を陰影増大速度大の群とした. 予後不良群と陰影増大速度大の群を合わせたものを臨床的悪性度大の群, 予後良好群と陰影増大速度小の群を合わせたものを臨床的悪性度小の群とした。擦過細胞の,(1) 核小体数,(2) 核小体数の変動係数,(3) 核面積,(4) 核の大小不同性,(5) 核径,(6) 核円形度,(7) N/C比を画像解析装置で定量的に計測し, 両群で比較検討した.
その結果, 臨床的悪性度大の群の擦過細胞像では, 核1個あたりの核小体数が多く (p<0.05), 核は正円形に近く (P<0.05), N/C比が大であった (P<0.001). 肺末梢型腺癌の擦過細胞像において核小体数, 核円形度, N/c比は予後推定因子となりうると考えられた.

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