子宮頸癌が心嚢に転移することは必ずしもまれではないが, 臨床的に心嚢転移が明らかになり, 細胞診により生前に診断される症例はきわめてまれである. われわれは生前に細胞診により診断し得た子宮頸癌の心嚢転移例を3例経験した. 3症例はすべてIb期の子宮頸癌で, 広汎性子宮全摘術, 骨盤リンパ節廓清を施行し, 3例ともに大細胞非角化型扁平上皮癌で, 多数のリンパ節転移, 著明な脈管侵襲を認めていた. 根治療法後, 1年, 2年, 5年を経過してから, 淡黄色または血性の心嚢液貯留を認めた. 細胞学的には, 血性背景の中に悪性細胞が集塊を形成し, または孤立性に出現している. 集塊の大きさは種々で, 重積性の著明なまりも状を呈するものが多く, 一部には柵状配列, 腺管様構造を認めるものもある. しかし, 腺癌とは異なり, 一見まりも状の集塊でも, 集塊を形成する細胞は扁平で同心円状に層状に配列していた. また細胞境界が明らかで, 細胞質内に層状構造を認めることより, 扁平上皮癌の転移と診断することが可能であった. 核クロマチンは増量し, 核の大小不同がみられ, 一部には奇形核も出現していた.