日本臨床細胞学会雑誌
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胞状奇胎分娩後の管理における子宮腔内細胞診の意義
横田 栄夫馬渕 義也細道 太郎木村 雅紀今井 秀彰吉田 恵
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1990 年 29 巻 6 号 p. 863-868

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抄録

胞状奇胎 (奇胎) 分娩後の管理における子宮腔内細胞診の意義について検討を行うために, 奇胎分娩後経日的に子宮内腔の吸引細胞診を施行し, trophoblast細胞の消退過程を尿中HCG値の経過とともに観察した.
対象は胞状奇胎13例, 侵入奇胎4例である. 奇胎分娩後のtrophoblast細胞の検出率は1週目では13例中10例 (76.9%), 2週目では5例 (38.5%), 3週目では3例 (23.1%) と検出率が減少し, 4週目には全く検出されなくなる。Trophoblast細胞の検出されなくなった症例ではかわって子宮内膜修復細胞の出現をみた。またいずれの症例も尿中HCG値の消退に先立ってtrophoblast細胞の消失をみた.
侵入奇胎の症例では4例全例に奇胎分娩後4週をこえても多数の異型性を有するtrophoblast細胞が検出され, 尿中HCG値も高値を示した。さらに化学療法の治療経過に伴いtrophoblast細胞の消失と子宮内膜修復細胞の出現, それに引き続く尿中HCG値の低下により病態の把握がより的確にでき得た。
したがって奇胎分娩後の子宮腔内細胞診によるtrophoblast細胞の検出は奇胎分娩後の管理上大変有意義であり, 特に奇胎分娩後4週をこえてtrophoblast細胞が検出される場合には続発性変化を強く疑う必要性が示唆された.

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