日本臨床細胞学会雑誌
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膵の類破骨細胞型巨細胞癌の捺印細胞像
大朏 祐治真辺 俊一園部 宏岡田 雄平河合 凱彦中川 秀和西原 幸一
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1990 年 29 巻 6 号 p. 908-911

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抄録

われわれは転移を認めた膵の類破骨細胞型巨細胞癌症例の捺印細胞, 免疫細胞学的ならびに走査電顕所見について検索したので報告する.
症例は71歳女性で, 昭和63年10月末に閉塞性黄疸のため入院し, 胆嚢・膵頭部に腫瘍が見出された. 手術材料では, 径5×5.5cm大の膵頭部腫瘍, 径3cm大の胆嚢腫瘍ならびに総胆管周囲リンパ節腫大を認めた. いずれも灰白ないし赤褐色で壊死を伴っており, 境界は比較的明瞭であった. 捺印細胞所見は膵と胆嚢腫瘍は同様で, 胞体豊富な多核細胞と単核細胞が認められ, 明瞭な核小体を有し, 核質は明るい. 多核巨細胞は, 破骨細胞に類似していた. S-100蛋白α亜分画抗体とMB+抗体が多核巨細胞胞体に陽性であった. 走査電顕所見では, 大型から小型のものが区別され, 核に対応する部での陥凹や表面にPitsを認め, 互いに不規則な突起をのばして混在していた.
これらの所見は, 病理組織学的検索結果に支持された膵の類破骨細胞型巨細胞癌の捺印細胞像であり, 本腫瘍はまれではあるが, 通常の巨細胞癌に比し予後はよく, 特徴的な所見を有しているので, 膵十二指腸部腫瘍の診断に際して十分に留意すべき疾患と考える.

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