日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部病変とHuman Papillomavirus (H.P.V.) の関連について
新しい簡易検出法を用いて
田中 博志田崎 民和高村 邦子蓮尾 泰之藤吉 啓造森 一朗福富 毅片岡 明生薬師寺 道明
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1991 年 30 巻 1 号 p. 28-34

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抄録

子宮頸部病変とhuman papillomavirus (H.P.V.) の関連について, dot blo thybridization法およびsouthern blot法 (H.P.V.DNA診断キットFO-8830) を用いて検討して以下の結果を得た.
1) 細胞診異常を示さない無症候患者におけるH.P.V.-DNAの検出率は2/100 (2%) であった.
2) 細胞診異常を示した症例におけるH.P.V.-DNAの検出率は45/145 (31.0%) で, 若年者とくに20歳台に多い傾向を認めた.
3) 子宮頸部病変におけるH.P.V.-DNAの陽性率は, condyloma acuminatum 2/2 (100%), mild, moderate dysplasia 27/66 (40.9%), severe dysplasia 6/15 (40.0%), carcinoma in situ 1/1 (100%), invasive cancer 7/10 (70%) であった.
4) 子宮頸部病変とH.P.V.-DNAのtypeとの関係では, type 6, 11はdysplasiaおよび子宮頸癌には存在せず, condyloma acuminatumの2例にのみ陽性であった. type 16はdysplasia 14例, 子宮頸癌5例の計19症例に存在, type 31は, dysplasia 21例, 子宮頸癌6例の計27症例とH.P.V.-DNA陽性例の約60%と多数を占めていた.
5) H.P.V.DNA診断キットFO-8830とVira Papの一致率は84.8%であった.
H.P.V.の子宮頸部におけるnatural historyの解明には, 今後とも症例数を積み重ねてゆくと同時に, follow upすることによるprospectiveな研究が必要と思われた.

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