日本臨床細胞学会雑誌
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術中の脾嚢胞穿刺細胞診で診断し得た孤立性脾転移性癌の1例
南 修二大井 章史磨伊 正義
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1991 年 30 巻 1 号 p. 79-82

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抄録

卵巣癌の脾臓転移例を経験したので, その穿刺細胞所見を中心に報告した.
患者は74歳の女性で, 65歳時左卵巣癌のために, 両側付属器および子宮切除術をうけている.主訴は左側腹部痛.CTスキャン, MRIスキャン, 超音波では脾に10×9cm大の多房性嚢胞を認めた以外に著変はなく, 検査データではCEA, CA125の軽度上昇を認めた.脾のリンパ管腫の疑いで開腹を行った. 術中に行われた脾の穿刺細胞診では, 少数ながら乳頭状集塊もしくは散在性に異型細胞を認めた.核は偏在性で円形ないし楕円形, クロマチンは微細顆粒状で, 核小体は中心に1個もしくは非中心性に2~3個, 細胞質は淡緑色で空胞を有する腺癌の特徴をそなえていた.
切除された脾臓は大きさ13×12×5cm, 重量220gであった. 割面をみると8.5×6.0×5.0cm大の嚢胞を認め, 脾門部を中心として6×4×4cm大の灰白色充実性の部分を認めた. 組織学的には乳頭状腺癌であり, 原発の卵巣癌 (乳頭状漿液性嚢胞腺癌) の組織像と類似の組織像であった.

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