日本臨床細胞学会雑誌
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いわゆる膀胱Nephrogenic adenomaの2例
清水 健正和 信英山田 喬佐々木 英夫鈴木 徹伊佐山 絹代清水 誠一郎大和田 文雄
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1991 年 30 巻 3 号 p. 546-551

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抄録

膀胱に発生したいわゆるNephrogenic adenoma 2例の尿細胞像および組織像を報告した.症例は13歳男児と72歳女性で, 前者は黄色肉芽腫性腎孟腎炎の既往を有する.細胞診断学的には, いずれも炎症性背景を伴い, 尿中に移行上皮とは異なり中等度の重積を示す腺様細胞の小集塊を散見した.細胞は円柱~ 立方状, 胞体は淡明~ レース状で一部に胞体内空胞をみとめ, 核は中心~ やや偏在性に位置し類円形であった.小型の核小体もみられた.核クロマチンは軽~ 中等度の均等な増量を示し, 核膜の明瞭化もみられた.しかしN/C比の著しい増加, 核縁不整, クロマチン凝集など悪性を示唆する所見はみられず, 良性の腺由来異型細胞と考えられた.組織学的には, 病変の表面および固有層内に, 刷子縁様構造を有し尿細管上皮に類似する円柱状細胞の増生をみとめた.症例1では, 炎症や肉芽組織を背景に固有層内に小数の小腺管形成がみられ, 化生様の像を呈していた.症例2では, 固有層内にびまん性に大小の腺管増生がみられ, あたかも腫瘍性変化のごとくみえた.本疾患のごとく尿中に腺様上皮をみとめた場合には, 良性疾患としては, nephrogenic adenomaをはじめとして腎上皮細胞, 悪性疾患では泌尿生殖器原発や他臓器から浸潤した腺癌との鑑別が必要である.

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