日本臨床細胞学会雑誌
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皮膚筋炎を合併した, 正常大の卵巣漿液性腺癌の1症例
高村 郁世菅 三知雄貝森 光大竹越 美佐江一戸 志津子水野 博子石沢 ひと美桜庭 厚
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1991 年 30 巻 3 号 p. 593-599

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抄録

皮膚筋炎 (Dermatomyositis) が先行合併し, 子宮腔部および子宮腔内細胞診で腫瘍細胞を認めた, 正常大の卵巣に発生した漿液性嚢胞腺癌の症例を経験したので報告する.
症例は44歳, 女性, 皮膚筋炎のため当院皮膚科に入院治療していたが, 腫瘍マーカー血清CA125が上昇してきたため当科に婦人科悪性腫瘍の有無の検索が依頼された.内診, 超音波および骨盤CTscanでは異常所見は認められなかったが, 子宮膣部および子宮腔内細胞診で, 腫瘍背景を欠如し, psammoma bodyをともなった腺癌細胞集塊がみられた.ダグラス窩穿刺細胞診でも同様の腺癌細胞を認めたため卵巣腫瘍 (卵巣漿液性嚢胞腺癌) を推定病変として開腹手術を予定したが, 肺炎の合併, その他一般状態の悪化のため中止せざるをえなかった.その後最終的には脳血管障害で死亡し剖検が行われた.Macroscopicには腹腔内に著変はみられなかったが, 両側正常大卵巣に漿液性嚢胞腺癌の病理所見が認められ, また両側卵管に疎通性を認めた.子宮膣部および子宮腔内細胞診上の腫瘍細胞出現機序としては経卵管由来であることが示唆された.

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