日本臨床細胞学会雑誌
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流産における子宮内容物の捺印細胞診のもつ臨床的意義について
山田 潔塩田 吉一郎石井 美和子笹川 基
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1991 年 30 巻 4 号 p. 646-650

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抄録

trophoblastにはsyncytiotrophoblast (ST), cytotrophoblast (CT) の他, cellcolumnなどに存在するintermediate trophoblast (IT) がある. 流産の子宮内容物を用いた捺印細胞診に出現するtrophoblastを細胞形態学的に観察し, 捺印細胞診のもつ臨床的意義を検討した
自然流産36例 (妊娠5-14週) の子宮内容物を捺印後, パパニコロー染色して形態学的観察を行い, 以下の結果を得た.(1) 細胞診に出現するのはSTとITであり, CTは観察されなかった.(2) 病理組織診で絨毛がみられた26例中25例の細胞診でSTが観察された.一方, 組織診で絨毛のみられない10例中1例でSTが観察された.他の9例中6例は完全流産, 3例は卵管妊娠であった.(3) ITは16例でみられ, 妊娠週数の若い症例で多数観察される傾向が認められた.(4) 26例中19例のSTに細胞質内空胞がみられ, 流産trophoblastの細胞学的特徴と思われた.
流産例では子宮外妊娠の除外診断のため子宮内容物の病理組織検査が行われるが, 胎児成分であるtrophoblastの証明をするうえで, 捺印細胞診は組織診に優るとも劣らぬ成績を示した. 細胞診は簡便性, 迅速性, 経済性などに優れており, 流産における子宮外妊娠の除外診断にきわめて有用と思われた.

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