日本臨床細胞学会雑誌
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反応性中皮, 悪性胸膜中皮腫および肺腺癌における複合糖質の細胞化学
広井 禎之河合 俊明
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1991 年 30 巻 4 号 p. 697-702

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抄録

細胞形態のみでは鑑別困難な反応性中皮細胞 (7例), 悪性胸膜中皮腫細胞 (4例), 肺腺癌細胞 (12例) について, 免疫細胞化学, レクチン結合性を検索し, 細胞診断に有用であるか検討した.抗体は抗epithelial membrane antigen (EMA), 抗Keratin, 抗carcinoembryonic antigen (CEA) の3種類であり, レクチンは, peanut agglutinin (PNA), wheat germ agglutinin (WGA), succinylated WGA (SucWGA), Ricinus communis-1 (RCA-1), Helix pomatia (HPA) の5種類を使用した.細胞は95%エタノールで湿固定し, avidin-biotin-peroxidase complex法にて染色した.反応性中皮細胞はKeratin 6例 (86%), EMA3例 (43%), neuraminidase処理後のPNA5例 (72%), WGA 3例 (43%) に陽性を示したが, CEA, SucWGA, RCA-1, HPAは全例陰性であった.中皮腫細胞も同様の傾向を示し, CEA, SucWGA, RCA-1, HPAが全例陰性を呈した.肺腺癌細胞はいずれの抗体, レクチンともよく反応し, CEAは12例中11例 (92%) に染色され, SucWGAは9例 (75%), RCA-1は9例 (75%), HPAは10例 (83%) であった.以上の結果より, CEA, SucWGA, RCA-1, HPAによる細胞化学は, 中皮系細胞と肺腺癌細胞との鑑別に有用であると考えられる.

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