1991 年 30 巻 4 号 p. 771-774
免疫芽球性リンパ節症様T細胞性リンパ腫 (IBL-like T cell lymphoma) の1例を経験し, リンパ節生検細胞標本から得られた所見をもとに, 本疾患における細胞診断の要点を検討したので報告する.患者は56歳男性で, 全身リンパ節腫脹・肝脾腫および発熱がみられ, 精査のため頸部リンパ節生検 (組織診および捺印細胞診) を受け, IBL-like T cell lymphomaと診断された.組織標本ではリンパ節基本構造の破壊・小血管の樹枝状増生・異常リンパ球の血管周囲における塊状ないし瀰漫性増殖が認められた.細胞標本には, 好中球・リンパ球・形質細胞・組織球などの炎症性細胞とともに, 多数の異常リンパ球が出現していた.これら異常リンパ球は芽球様細胞と淡明細胞から成り, 免疫組織学的にT細胞性マーカーを有していた.本疾患を細胞診で診断するためには,(1) 炎症性細胞を含む多彩な細胞像の中に異常リンパ球がみられること,(2) 異常リンパ球は芽球様細胞と淡明細胞から成っていることの把握が必要である.