日本臨床細胞学会雑誌
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Rhodamine 123を利用した癌細胞における温熱感受性試験の基礎的研究
梶原 啓司
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1991 年 30 巻 6 号 p. 1030-1036

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抄録

従来の煩雑なコロニー形成法にかわる新しい温熱感受性試験として, 生細胞のミトコンドリアに選択的に取り込まれるrhodamine 123 (Rh-123) の有用性を検討した. HeLa細胞では, 43℃ ・1時間加温直後にRh-123で染色されたミトコンドリアが核膜周囲へ著明に集積した。一方, コロニー形成率でHeLa細胞より高い温熱感受性を有するL929細胞では, ミトコンドリアは40℃ で核膜周囲へ移動を開始し, 41℃ でHeLa細胞の43℃ に匹敵する著明な核膜周囲への集積を認めた. この核膜周囲への集積度合は温度依存性であり, コロニー形成率から評価した温熱感受性とよく相関した。そこで外科的切除標本17例の初代培養細胞を利用して検討した。17例中3例が核膜周囲ヘミトコンドリアの集積を呈した. またコロニー形成率を評価し得た3例中で, 核膜周囲へ集積を示した1例が他の2例より明らかにコロニー形成率の低下を認めた. 以上より, Rh-123染色されたミトコンドリアの細胞内局在を評価することは, コロニー形成率による評価より迅速で簡便な温熱感受性試験として有用である.

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