日本臨床細胞学会雑誌
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子宮内膜細胞診: 観察者間における判定再現性の解析とその改善
手塚 文明東岩井 久岩淵 一夫及川 和子及川 洋恵志賀 清彦寿円 裕康並木 恒夫濱中 貴久子米本 行範三浦 敏也
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1991 年 30 巻 6 号 p. 1050-1054

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抄録

子宮内膜細胞診における「観察者間の判定再現性」を解析するため, 内膜腺癌・増殖症および非腫瘍性変化を含む70個の上皮性細胞クラスターについて, 19人の経験豊かな観察者 (11人の細胞検査士と8人の指導医) に異型度判定を依頼した. 判定は, 各観察者が70個のクラスターのそれぞれに対し3種のカテゴリー (「陰性」,「疑陽性」および「陽性」) の中の一つを与えるものとした. 判定一致の程度はKappa (κ) 統計値を用いて表した。全体の一致はκ=0.36, 判定カテゴリー別の一致は「陰性」に対しκ=0.46,「陰性」に対しκ=0.47,「疑陽性」に対しκ=0.14であった.観察者が一堂に集まりこれらの結果を検討学習する機会をもち, その後2回目の異型度判定を依頼した. その結果, 全体でκ=0.48,「陰性」でκ=0.55,「陽性」でκ=0.61と著しい再現性の改善が認められた. しかし「疑陽性」についてはκ=0.22, 観察者間で依然として混乱のあることが示された. これは, 内膜増殖性病変における「疑陽性」の取り扱い基準が確立していない現状を反映しており, 早急なコンセンサス作りが必要である.

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