日本臨床細胞学会雑誌
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若年型膵腫瘍の捺印細胞所見: Papillary-cyst neoplasmと膵芽腫について
山下 学島崎 栄一上妻 喜勝松能 久雄小西 二三男高柳 尹立南部 澄宮本 正俊
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1991 年 30 巻 6 号 p. 1083-1089

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抄録

若年型膵腫瘍はおもにpapillary cystic neoplasm (PCN) と膵芽腫とに大別される.8歳女児のPCNと10歳男児の膵芽腫について細胞像を中心に臨床病理学的に報告した.肉眼像, 組織像では両者は固有の特色ある所見を示したが, 捺印細胞像では, 類似した細胞像を示し, その鑑別はむずかしいと考えられた.共通した細胞学的特徴は, 1) 核は大小不同に乏しく均一な卵円形で偏在し, 核クロマチンは細顆粒状, 核縁は円滑で薄い, 2) 核小体は小型円形で1~3個, 3) 中等大・立方状腫瘍細胞の胞体は広く, 核の2~4倍程度であり, ライトグリーン好性微細顆粒状あるいは泡沫状を示し, 細胞境界は不明瞭である, 4) 疎な結合のシート状配列を示す, などである.また, 捺印細胞を用いた免疫細胞化学的検索でもPCNと膵芽腫はともに膵amylaseとalpha-1-antitrypsinが共通して局在し, 両腫瘍の鑑別法にはならなかった.PCNのみに認めた所見は一部の腫瘍胞体にみられたライトグリーン好性の粗大顆粒であり, この所見はPCNの診断に有効な細胞学的所見と考えられた.一方, 膵芽腫に特異的な所見はPAS反応で細顆粒状に強陽性となる豊富な胞体内糖質の存在であった.

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