日本臨床細胞学会雑誌
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間質に破骨細胞様巨細胞を伴った乳癌の1例
日野浦 雄之丸塚 浩助林 透荒武 八起大滝 幸哉難波 清佐藤 新伍
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1991 年 30 巻 6 号 p. 1109-1114

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抄録

間質に破骨細胞様多核巨細胞を伴う乳癌はまれであり, 吸引細胞診で診断された報告例は少ない.われわれは41歳女性の1例についてその細胞像を示すとともに種々の細胞・組織学的検索, 電顕的観察を行い巨細胞の由来について検討した.吸引細胞診標本にはまりも状, 乳頭状構造を示す癌細胞集塊に加え単核細胞および多核巨細胞を多数認めた.後者は破骨細胞様形態を呈し, 細胞中心部に数個ないし35個の核を有していた.酵素細胞化学的にはacid-phosphatase強陽性, alkali-phosphataseおよびesterase弱陽性であった.組織学的には乳頭腺管癌であり, 多核巨細胞は免疫細胞化学および免疫組織化学的に一部の細胞がlysozymeおよびα1-antitrypsin陽性であった.電顕的には多核巨細胞と癌細胞の問には移行やdesmosomeによる細胞接着の所見は認められなかった.
以上の所見より多核巨細胞は間質の細胞であり, 今までの報告同様組織球由来が考えられた.

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