日本臨床細胞学会雑誌
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腹水中に巨核球の出現をみた骨髄線維症の1例
九島 巳樹太田 秀一風間 和男古川 恵子杉山 喜彦鈴木 孝夫
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1991 年 30 巻 6 号 p. 1154-1158

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抄録

原発性骨髄線維症の経過中に腹水が貯留し, その腹水中に多数の巨核球を含む造血細胞が認められた症例を経験した。さらに本症例のように腹水細胞診に出現した巨核球と, 種々の多核「巨細胞」との見分けかたについても考察したので報告した.症例は75歳の女性で, 体重増加と腹部膨満を主訴として初回入院.入院時, 腹水の貯留を認め, 腹水の細胞診では中皮細胞と炎症細胞のみであったが, 約7ヵ月半後に再入院した際の腹水細胞診で多数の巨核球をはじめ, 赤芽球系および顆粒球系を含む造血細胞を認めた.大型で多核の細胞 (巨核球) が目立つため, 最初は未分化癌や肉腫との鑑別が問題となったが, PAS染色と各種免疫染色の結果, 巨核球と判明した。化学療法 [cytosine arabinoside (以下Ara-Cと略す), 6-mercaptopurine (以下6-MPと略す)] により巨核球を含む造血細胞は消失し, 約3ヵ月の経過で腹水貯留もなくなり, 退院した.種々の疾患で腹水中に巨核球を含む造血細胞が出現しうることは, 従来より指摘されていたが, その頻度はきわめて低く, 日常の細胞診業務で経験することは, 非常にまれであると考えられる.したがって, 本症例のように骨髄線維症の髄外造血の表現として, 巨核球を含む造血細胞が腹水あるいは胸水中に出現する可能性があることを念頭において鏡検することが重要であると考えた.

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