きわめてまれな腫瘍である精巣鞘膜中皮腫の穿刺細胞像について報告する.症例は20歳男性で, 2年前より左陰嚢腫脹を繰り返し, 陰嚢水腫の診断のもと, 3度の穿刺, 排液の後, 瘤切除術をうけていた.1990年4月になり穿刺細胞診で中皮腫が疑われ, 術中組織診断で悪性が疑われたため除睾術を受けた.病理診断は低悪性度の精巣鞘膜中皮腫であった.穿刺液細胞像では中皮類似の大きな乳頭状細胞集塊の多数の出現をみたが, 細胞異型は乏しく細胞学的に悪性と診断することは困難であった.陰嚢水腫の穿刺液の細胞学的検査は精巣鞘膜中皮腫の有効な術前診断方法であるが細胞異型の弱いこともあるので診断には十分な注意が必要である.