日本臨床細胞学会雑誌
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対側癌性胸膜炎を契機として発見された甲状腺癌の1例
高岡 和夫植村 弘幸井上 勝一
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1991 年 30 巻 6 号 p. 1169-1173

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抄録

本症例は, 肺転移および胸腔内甲状腺を臨床上認めないにもかかわらず, 対側の癌性胸膜炎で発症した腫瘍発育上まれな甲状腺癌症例で, 細胞診が診断に有用であった.症例の左胸水細胞診所見は, 乳頭状重積性で濾胞状構造もみられた.細胞はN/C比の大きな比較的均一小型な細胞で異型度は低かった.しかし, 核内封入体・砂粒体を認めた.以上の細胞診所見より, 甲状腺癌の存在が推定された.精査の結果, 右甲状腺癌と診断された.甲状腺全摘の結果, 病理診断は乳頭癌でリンパ節転移 (#5) を認めた.9ヵ月後に胸水の再貯留が出現し初回と同様の腺癌を確認した.このときの血中および胸水中のサイログロブリン値は, それぞれ87.8ng/ml, 1549ng/mlと著増していた.以上の検査結果および臨床経過より右甲状腺原発癌による左転移性癌性胸膜炎と診断した.

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