日本臨床細胞学会雑誌
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子宮体癌の境界病変とその細胞診
上坊 敏子大河原 聡森沢 孝行蔵本 博行西島 正博
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1992 年 31 巻 1 号 p. 11-20

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抄録

子宮体癌における前癌病変と考えられている子宮内膜増殖症と体癌との関係を組織病理学的に検討し, その細胞所見を明らかにせんとした.北里大学病院で手術を施行した子宮体癌180例を対象としたが, そのうち100例は内膜増殖症を, 63症例は正常内膜のみを随伴していた.前者では, G 1, G2腺癌の頻度が高く, 筋層浸潤の浅いIB期までの早期例が多くを占め, ER, PRの陽性率も高く, 平均年齢は49.3歳と後者の57.4歳より若年であった.また, 複数の増殖症を随伴するものが63%を占め, 異型増殖症 (以下異型増殖), 腺腫性増殖症 (以下腺増殖) は69例に, 嚢胞性腺増殖症 (以下嚢胞増殖) は44例に随伴していた.増殖症随伴体癌100例中66例は癌と増殖症が隣接していたが, 異型増殖と隣接するものが47例と最も多く, 腺増殖は22例, 嚢胞増殖は17例であった.以上から, 少なくとも増殖症を合併している体癌では, 異型増殖からの癌化の可能性が非常に高いと考え, 異型増殖, および筋層浸潤のない体癌 (新FIGO分類によるIA期) を, 体癌における境界病変と考えた.両病変の摘出子宮における検討では, 前者の92.9%, 後者の57.1%が正常内膜を伴うほか, 各種増殖症を随伴するものが多く, 最強病変の面積が25%をこえる症例は, それぞれ7.1%, 20.8%と低率であった.細胞診標本には, 正常内膜に加え, 良性増殖由来の細胞が出現し, 細胞診断においては, 増殖症由来の細胞に注目する必要があるとの結論を得た.

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