日本臨床細胞学会雑誌
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気管支における境界病変の診断とその細胞像
佐藤 雅美斉藤 泰紀永元 則義遠藤 千顕薄田 勝男高橋 里美菅間 敬治佐川 元保佐藤 博俊中嶋 隆太郎藤村 重文
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1992 年 31 巻 1 号 p. 21-27

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抄録

喀疾細胞診で疑陽性および陽性と判定された症例に対して徹底した精査を行うことにより, 気管支においても境界病変の診断が可能となってきた.45例の境界病変例の喀疾細胞診判定は疑陽性34例, 陽性11例であった.これら45例に対し, 各区域支を系統的にすべて擦過する気管支全支擦過法を中心とする徹底した精査を行い, 51病変の境界病変を診断した.擦過細胞診の陽性率は86.3%, 生検の陽性率は45.1%であった.
細胞像の検討では境界病変では細胞, 核面積ともに有意に浸潤癌例より小さく核型不整の程度は軽度であった.しかし, 喀疾細胞診のみでは境界病変と上皮内癌を区別できない症例も存在した.一方, 擦過細胞像の検討では上記の特徴に加え, 境界病変は強い結合性を示し, 得られる異型細胞も少数で, 細胞異型も軽度なことから上皮内癌との鑑別は可能であった.
これら気管支における境界病変は, その自然史の解明や病変の亜型分類またHPVなどの関与の有無など今後解明すべき問題を多く残している.境界病変の診断が可能になったことにより, 今後の発展が期待される.

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