日本臨床細胞学会雑誌
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破骨細胞様巨細胞の出現を伴う乳癌について
11例の臨床細胞病理学的検討
清水 健正和 信英三枝 圭山田 喬安斉 幹雄寺畑 信太郎神田 和弘岡本 一也村松 一巳
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1992 年 31 巻 1 号 p. 52-59

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抄録

破骨細胞様巨細胞 (OCGC) の出現を伴う乳癌15例について細胞病理学的に検討した.症例はすべて女性, 平均45.6歳, 各施設の全乳癌に対する頻度は1.4~2.1%であった。術前穿刺吸引細胞診の行われた11例では, 不規則に重積し乳頭状・充実性となる比較的異型乏しい癌細胞集塊間に, OCGCを散見した.OCGCは長径30~180μm, 多角形で突起を有しライト緑好性で厚く辺縁明瞭な細胞質と, 中心性に位置し軽度重積を示す数~ 数十個の核を有していた.核径は癌細胞の核よりやや大きいが, 核縁は明瞭で核膜は薄くクロマチン増量も軽度であった.組織学的には, OCGCは乳頭管状・充実管状に浸潤する癌巣間に豊富な毛細血管の増生を背景として認められた.腫瘍組織型は全例浸潤性乳管癌で, 9例は2.0cm以下で乳腺外脂肪織に浸潤するもの12例であった.細胞・組織学的所見は従来77例の報告とほぼ同様である.免疫組織学的にKP-1が75%の症例でOCGCに陽性, リゾチームが42%に弱陽性であった.組織球・単球系細胞由来であることが強く示唆された.死亡・再発例が各1例あるが, 術後観察期間は6ヵ月~14年6ヵ月 (9例は5年以下) と全体に短く今後の追跡が必要と考えられた.

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