日本臨床細胞学会雑誌
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免疫粘着反応および蛍光抗体法による婦人科腫瘍のOncofetal Antigen-Iに関する研究
樋口 正臣半藤 保
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1992 年 31 巻 3 号 p. 472-475

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抄録

生体に高い抗原性を有するOncofetal-antigen (OFA-I) の婦人科悪性腫瘍における分布状態を免疫粘着反応 (IA法) と間接蛍光抗体法 (MIF) にて検討を行い, 以下の結果を得た.
1. 免疫粘着反応での各種婦人科悪性腫瘍におけるOFA-1の存在は, 卵巣癌20例中14例 (70%) 未分化胚細胞腫3例中3例 (100%) に, 子宮頸癌では, 15例中6例 (40%) に, 外陰癌2例中1例 (50%) に, 子宮体癌7例中3例 (43%) に, 子宮平滑筋肉腫2例中2例 (100%) に認められた.
2. 間接蛍光抗体法では, 卵巣悪性腫瘍では, 20例中9例 (45%) に, 子宮頸癌では, 15例中5例 (33%) に, 外陰癌2例中2例 (100%) に, 子宮体癌7例中3例 (43%) に, 子宮平滑筋肉腫2例中1例に主として細胞膜上にOFA-Iの存在が認められた.
3. 子宮筋腫症例17例の子宮頸部上皮, 子宮内膜, 筋層部組織および卵巣上皮性良性腫瘍8例の腫瘍上皮にはIA法, 間接蛍光抗体法両方においても, すべての組織にOFA-Iが認められなかった.
以上の結果からOFA-Iは, 婦人科悪性腫瘍組織に高頻度に存在し良性腫瘍組織には存在しないことが判明した. このOFA-Iは, 生体に高い抗原性を有しさらにその抗体が腫瘍細胞に対し強い細胞障害作用を有していることから, 抗OFA-I抗体による婦人科悪性腫瘍に対する特異的免疫療法への応用の可能性が示された.

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