日本臨床細胞学会雑誌
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食道未分化小細胞癌の1例
手塚 文明安藤 紀昭草刈 千賀志平山 克
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1992 年 31 巻 3 号 p. 512-515

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抄録

食道原発・未分化小細胞癌の1例を報告する. 患者は49歳男性. 検診で食道胸部上中部を占拠する癌が発見され, 生検組織診および捺印細胞診により未分化小細胞癌と診断された. 術前照射で癌巣の縮小を図り, 根治手術を施行したが, 脳を含む全身諸臓器につぎつぎと転移巣が現れ, 術後10ヵ月で死亡した. 癌細胞は, 概して小型で結合性に乏しく孤立散在性の分布を示していた. ごく一部で小塊形成を伴い, 免疫抗体法でcytokeratin陽性, 電顕的にdesmosomal attachmentが証明された. しかし扁平上皮や腺上皮への分化は確認されなかった. またargyrophiliaやneurosecretory granulesは存在せず, 神経内分泌細胞への分化も認められなかった. 本癌は食道上皮のtotipotent primitivecellに由来した未分化細胞癌と理解された. 食道・未分化小細胞癌は, 従来報告が少ないが, 必ずしも発生頻度の低いものでなく, その存在が広く認識されるにつれ増加するものと予想される.

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