日本臨床細胞学会雑誌
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術中穿刺吸引細胞診を行った卵巣の網状型セルトリ・間質細胞腫瘍の1例
草間 博福島 良明大塚 光一池畑 信正花岡 知々夫
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1992 年 31 巻 3 号 p. 536-540

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抄録

症例は9歳女子. 下腹部膨満感を主訴に来院, 左卵巣腫瘍の診断にて切除術が施行された. 腫瘍は最大径13cm, 割面では黄白色の充実性部分に大小の嚢胞をまじえていた. 術中の穿刺吸引細胞像では丸みをおびた小型の乳頭状細胞集団が多くを占めたが, 重積性を示す比較的大型の乳頭状集団も散見され, その先端部からさらに小乳頭状の突出像を伴っていた. 構成細胞は小型で胞体は乏しく, 境界は不明瞭. 類円形でほぼ均一な核を有し, 核縁は平滑で中等度のクロマチン増量を示した. 淡明な胞体を有するやや大型の細胞が平面的に配列する集団も少数ながら出現し, その一部は間質様の紡錘状細胞と接していた. 組織学的には精巣網に類似した大小の不規則な網状構造が特徴的で, 一部は嚢胞状の拡張を示した. 内壁は小型立方状細胞に被覆され, 小型乳頭状の突出を伴っていた. 充実性部分では, 紡錘状細胞からなる間質様成分の中に未熟なセルトリ細胞が索状ないしリボン状に配列し, スリット状の網状構造への移行を示した. 臨床病理学的に卵黄嚢腫瘍や漿液性腺癌との鑑別が重要である.

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