日本臨床細胞学会雑誌
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子宮内膜細胞診における新しい標本作製法の試み
布引 治潘 静甲斐 一郎野田 貴代嚴 孟禄野田 定植木 実
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1992 年 31 巻 4 号 p. 613-620

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抄録

子宮内膜細胞診の判定は, 細胞個々の示す異型だけでなく, 病理学的な「組織構築」の異常を観察することも大切である. 著者らは細胞採取から標本作製に至る手技について改良を加え, 子宮腔内での組織構築が可能な限り推定しうる標本作製法を開発した.
すなわち従来の直接塗抹標本作製法に対して組織構築が保たれた状態で観察できるように, 以下の3項目について工夫および改良を行った.
1) 細胞採取後, ただちに塗抹することなく器具に付着する細胞および細胞集塊を生理的食塩水中に洗い落とし液状検体とする.
2) 上記液状検体にメンブレンフィルターを用い判定の障害となる赤血球を除去する.
3) 赤血球除去後のメンブレンフィルター上の細胞集塊の上にさらにほかのメンブレンフィルターを重ねて圧挫し, 固定後クロロホルムでフィルターを溶解. 残された細胞集塊を染色し2枚のカバーガラスで挟むように封入することにより顕微鏡下, 集塊の裏表の観察を可能とした.
この結果, 3次元的な細胞診標本の作製が可能となった. 本法を多くの症例に応用することにより, 子宮内膜細胞診の診断精度向上をはかりたい.

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