1992 年 31 巻 4 号 p. 639-643
症例は1歳2ヵ月の女児の頸部に発生した脂肪芽腫で, その捺印細胞像を報告するとともに, 代表的脂肪性腫瘍との比較検討も行った. 脂肪芽腫に関する細胞診の報告は本邦ではみられなかった. 脂肪芽腫にみられた細胞像は次のようであった.(1) 40~60μ 大の類円形単一空胞状脂肪芽細胞,(2) 多空胞状脂肪芽細胞,(3) 脂肪性細胞集団中に出現する短紡錘形核を有する集簇性の紡錘形細胞,(4) クモの巣状脂肪芽細胞,(5) 小型で核縁平滑で類円, 楕円, 紡錘形の核,(6) 裸核細胞をみる粘液腫状背景,(7) 成熟脂肪細胞などで, 全体的に単調な出現形態を示し, 良悪性の鑑別は容易であった. 良性脂肪性腫瘍では, むしろ通常の脂肪腫に類似していたが, 未熟な脂肪芽細胞の存在が脂肪芽細胞の診断に重要であると思われた.